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病気と治療について
Illness and treatment

向精神薬について
About medicines

精神疾患の薬物療法に用いる薬を「向精神薬(こうせいしんやく)」と呼びます。
ここでは、抗認知症薬や抗てんかん薬も含めて、当院で使用する薬について代表的なものを紹介します。

抗認知症薬

  • 認知症そのものを治すことはできませんが、進行を遅らせる効果が期待できます。よって「症状が変わらない」という場合は薬が効いている、ということになります。認知症の進行を完全に止めることはできませんが、進行を遅らせることで、日常生活機能が維持され、介護者の負担軽減にも繋がります。飲み薬として錠剤、ドライシロップ(水に溶かして飲む粉末状の薬)、口腔内崩壊錠(口の中で溶けて水なしでも飲める薬)があり、貼り薬もあるため、患者さんの状態や生活状況に合わせて薬を選択できます。

抗てんかん薬

  • てんかんの治療は薬物療法が第一優先になります。一部の患者さんでは従来の抗てんかん薬では十分に発作が抑えられないことがありますが、多くの患者さんが適切な薬剤選択と内服によって発作が抑えられます。最近では、新規抗てんかん薬と呼ばれる、従来の抗てんかん薬にはない作用機序をもち、副作用の少ない薬が開発され、治療選択肢が広がってきています。一部の抗てんかん薬は双極性障害の治療薬として使われており、それ以外にも情動の不安定さが目立つ場合など、個々の患者さんの症状に合わせて、それぞれの薬の特徴をふまえて使用されます。

抗精神病薬

  • 統合失調症の薬物療法の主軸となる薬です。第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)は精神運動興奮に対する鎮静効果や幻覚・妄想などの陽性症状に対する効果は優れている一方で、様々な副作用が出やすいという問題があります。こうした問題を解決するために、比較的鎮静効果はマイルドで、より副作用が少ない第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)が開発されています。一部の非定型抗精神病薬は双極性障害の治療薬として使われており、それ以外にも興奮や焦燥が目立つ場合など、個々の患者さんの症状に合わせて、それぞれの薬の特徴をふまえて使用されます。錠剤、液剤、口腔内崩壊錠に加えて、しばらく舌下において口腔粘膜から吸収される舌下錠、貼り薬、2週 or 4週 or 12週に1回筋肉注射を行う持続性注射剤もあり、患者さんの状態や生活状況に応じて幅広く調整を行うことができます。

気分安定薬

  • 双極性障害の薬物療法の主軸となる薬です。躁状態に対する効果、うつ状態に対する効果、再発予防効果を兼ね備えた薬が理想的な気分安定薬とされています。一部の抗てんかん薬や非定型抗精神病薬も双極性障害の治療薬として用いられます。躁状態に対する効果に優れているもの、うつ状態に対する効果が優れているものなど、それぞれの薬の特徴をふまえて、個々の患者さんの状態に合わせて調整します。基本的には飲み薬ですが、患者さんの状態によっては、維持療法において持続性注射剤の非定型抗精神病薬を選択することも可能です。

抗うつ薬

  • 主にうつ病・うつ状態に用いられる治療薬です。従来使用されていた三環系・四環系抗うつ薬は抗うつ効果は優れているものの、副作用が多く、現在は比較的副作用の少ない新規抗うつ薬が第一選択薬として用いられます。代表的な新規抗うつ薬は、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)と呼ばれるものになります。それぞれ薬の特徴があり、患者さんの特徴や状態に合わせて薬の調整を行います。SSRIは不安に対する効果に優れていることから、パニック障害や強迫性障害の治療薬としても用いられます。

抗不安薬

  • 抗不安薬は、不安や緊張などを和らげる薬です。そのほとんどがBZ(ベンゾジアゼピン)系薬剤と呼ばれるものになります。BZ系薬剤は抗不安作用以外にも、鎮静催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用があり、それぞれの薬の特徴を活かして様々な場面で使われます。即効性があり、効果を実感しやすい一方で、眠気やふらつきといった副作用が出やすいことや、依存を形成しやすいため、患者さんの特徴や状態を考慮して、適切に薬の調整を行います。

睡眠薬

  • 抗不安薬と同様、睡眠薬の多くはBZ系薬剤が主流でしたが、筋弛緩作用による夜間の転倒のリスクや長期使用による依存形成などの問題から、より安全性の高い、BZ系薬剤以外の睡眠薬が開発されています。患者さんの特徴や睡眠障害のタイプを考慮して、適切に薬の調整を行います。